No.222 出版UD研究会

一年ぶりに「出版UD研究会」が、専修大学神田キャンパスで開かれました。31回目となる今回は、「合成音声を活用した読書システムは、どこまで実現しているのか」という演題で日本電子出版協会の岡山さんから、お話がありました。

年間7万冊の新書が発売されているが、現状売れない。特に、雑誌の売上が、落ちていると、データが示されました。活字離れ、読書離れとも言われて久しいですが、方や、読みたくても読めない人が、増えている現状もあるようです。それは何も、視覚障害だけではなく、加齢によって細かい文字が、読みにくくなってきている人の存在もあります。

こういうなかで、危機感を持つ出版関係のみなさんを中心に、さまざまな取り組みが進んでいます。それにしても、合成音声の初期のものから最新のものまで、聞かせていただきましたが、進歩の跡は、歴然としています。利用者の「今出た本を、今読みたい」という声が紹介されましたが、早くなければ、情報ではない、ということが、今盛んに言われています。私たち音訳者も、しっかり、受け止めたいと思います。

ところで、この研究会は、ゲストスピーカーのお話は、もちろんですが、参加のみなさんとの情報交換も楽しみかつ、有意義です。いつもの松井さんはじめ、静岡からのKさん、今年3回目の出会いとなる高知の藤原さんと、たくさんの顔見知りの方、そして新しい出会いもありました。

さて、当ネットワークの6月の総会で「マルチメディアDAISY」に関する分科会を開きました。事例発表の一人に、関西のディスレクシアのお子さんを持つKさんを、お招きしました。義務教育までは、何とか確保できた教科書が、高校に進学したとたん、手に入らない。助けて、という、おかあさんの涙ながらの訴えを、覚えている方も多いことと思います。多くのアンケートに、「自分は、まだマルチメディアDAISYは、できないが、誰か、力を貸してあげて」と、ありました。結果、日本点字図書館、日本ライトハウス、九州大学数学プロジェクト、奈良DAISYの会、ATDOが協力して、支援をしているという、お知らせをいただいていました。日点のご担当の方にやっと、ご挨拶ができました。

「分科会に参加できて、本当によかった。何としても、このKさん親子の支援をしなくては」と、直ぐに取り組みを始められたとか。数学の教科書を見せてもらいました。たった一人のお子さんのために、こうして多くのみなさんが、立ち上がった。

小さなことかもしれませんが、このつなぎの役割を、果たせたとしたら、音ボラネットとして、こんなに嬉しいことはありません。関係の皆さまに改めて、お礼申し上げます。こういう出会いがあるので、また次回、この研究会に参加したいと思っています。

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