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No.256 開設25周年のお祝い会

社会福祉法人 視覚障害者支援総合センター(高橋実理事長)の開設25周年と高橋さんの81回目のお誕生日が、重なったお祝いの会に、お招きいただきました。
「藤田さんは、どういう関係で?」と出席者から尋ねられました。
見渡せば、みなさん長い間、センターを物心両面で支えてこられた方々ばかりです。
私はといえば、高橋理事長の思い、に賛同し、「競い合い、助け合うコンサート 羽ばたけ視覚障害音楽家たち」を、実行委員の一人として、応援してきただけです。
友人・知人は、もちろんのこと、当音ボラネットの会員のみなさんに協力していただき、チケットの売りさばきに撤してきました。
さて、「大学は出たけれど」「盲学生はどこへ行く」という時代、ご自身も筆舌に尽くせないご苦労をなさって、就職を勝ちとった経験を踏まえ、高橋さんは、学生や若い人たちの支援を続けてこられました。
これほどの情報化社会と言われる時代ですが、視覚障害のみなさんが、自由に選択できるほどの情報があるのでしょうか。
お一人お一人の実力を発揮できる機会には、今もって十分恵まれていない現状ではないでしょうか。
高橋さんは、おん年81歳とのことですが、いつお会いしても背筋をピシッと伸ばし、とても実年齢には、見えません。
後に続くみなさんのためにも、いつまでもお元気でと、お祈りします。ここでも会場のみなさんと、交流を深めることができました。厚労省の矢田さんには、テキスト化のことを、杉並区の副区長の菊池さんには、読み書き支援のことを、それぞれお話しました。
何が何でもというより、いつもダメ元で、先ずは共感の輪を広げようというのが、私流です。
この会があったのが、土曜日でしたが、次の週の水曜日に、区役所の障害者生活支援課の落合さんという方から、お電話をいただきました。
多少、時間がかかるかもしれないが、区として前向きに検討したいと。たいがい行政の担当者とは、名刺交換して、「貴いボランティア、ご苦労様です」とニッコリ言われて、それでおしまいというのが、お決まりのパターンです。
しかし、私は、そんなものだろう、世の中、そんなに簡単なものではないよと、思っています。
でも、たった一人でも、耳を傾けてくれたことは、ありがたいことで、決して無駄ではないと思っている人間です。
なので、このたびの杉並区の対応には、正直びっくりしました。
区民でもない私が、正式に陳情に行ったわけでもないのにと、思ってしまいました。
落合さんが、「区役所には、”3日ルール”というのがあります。できるかできないかは別にしても、3日以内には、返事をしなさいというものです」と、おっしゃっていました。
今まで、代読や代筆のニーズが、あることを知らなかったとおっしゃる障害者生活支援担当の方に、現状を知っていただけただけでも、一歩前進です。
当音ボラネットのホームページを紹介し、できたての「会報」をお送りしました。
今後みなさんに、このことで嬉しい報告ができることを期待したいと思います。

No.255 カルチャーショック

いつもの出版UD研究会への参加です。
しかし、こんなにカルチャーショックを受けたのは、初めてです。
今回は、「ろう児・ろう者にとっての読書」~ろう児をとりまく教育環境~と題して、あらゆる困難のなか、日本初の「日本手話で学ぶろう学校」を創られた玉田さとみさんのお話でした。
全国のろう学校で手話が禁止され、聞こえない音を聞き、聞こえない声を出させる「口話法」での授業が始まったのは、1933年のことです。さらには補聴器の活用を加えた「聴覚口話法」へと変化し、今日にいたっています。
戦争という時代背景のなか、「日本人たるや、日本語を話すべし」という風潮を受けてのことのようです。信じられませんが。
一方、世界のろう教育はというと、手話と書記言語(読み書き)という二つの異なる言語による、バイリンガル教育を行い、学習成果をあげてきました。
やがて、日本では、「手話で学んでいたら、もっと多くのことを知り、もっと勉強ができたはず。今の子どもたちに、同じ思いをさせたくない」と、青年ろう者が、立ち上がり、フリースクールを設立しました。
その後「手話での教育」を望む親たちが、一緒になって学校設立のための運動が始まりました。
ようやく、2008年に品川区内に私立のろう学校「明晴学園」が誕生したのです。
第1言語、つまり母語が「日本手話」、手話には書き言葉がないので、「書記日本語」を使うことになります。しかしこの日本語は、第2言語となるので、「書記日本語」を習得するには、かなりの努力が必要となるとのことです。
「手話」と呼ばれているものに2つあるということも、初めて知りました。
1つは、ろう者の言語である「日本手話」、日本語とは、語順も文法も違う独自の言語です。
もう1つは、「手指日本語(しゅしにほんご)」、日本語の語順に沿って手や指を動かすもの。これは、中途失聴者や難聴者には、有効だが、ろう者には、分かりにくいものだそうです。
聴者が「手話をしている気分」になる手話コーラスなどは、この「手指日本語」とのこと。
「手話」が聞こえない人のためにある言語だとすると、ろう児にとっては、大変迷惑な聴者の遊びというお話には、二の句がつげませんでした。
この玉田さんのお話を通して、改めて「母は強し」の感を深めました。学校設立の筆舌に尽くせぬご苦労を伺い、当音ボラネットの立ち上げの頃のことを、思いだしました。
到底足元にも及びませんが。
さて、この後は明晴学園理事長であり、ろう者演劇界の第一人者である演出家、役者といくつもの顔をお持ちの米内山明宏さんの出番です。
ろう社会のカリスマ的存在として、ろう者の声を発信し続けてきた方です。
「口話法の授業を受けさせられてきて、口話の恩恵は、なかった。卒業して、ろう者の学校を変えようと思った。ろう者には、無理ということを少しでもなくしたい」とおっしゃる。
日本が一番多いと言われ、3300はあるだろう手話サークルは、単語を手話に置き換えるだけ。趣味の会みたいなものと、厳しい指摘もありました。
全ての情報を耳から取り込まなくてはならない視覚障害者と、目から取り込まなくてはならないろう者・ろう児は、真逆の関係です。
しかしだからといって、私たち音訳ボランティアにとって、ろう者・ろう児の読書や教育環境を知ることは、決して無駄ではありません。
ここでも、理解の輪を広げていくことの大切さ。それぞれに関わっている人たちの「○○よがり」に、陥らないためにも、常に当事者のみなさんに教えていただくという謙虚さが大切。そして諦めない勇気が必要と教わりました。
最後に米内山さんが、「雪国」の冒頭部分を「日本手話」で語ってくれました。
流れるような美しい手話でした。

No.254 音訳ボランティア体験学習会

日立グループのみなさんをお迎えして、「音訳ボランティア体験学習会」を開きました。
日頃お世話になっているボラセンのコーディネートによるものです。
わずか2時間(最後に自由参加の交流会が30分ありました)という枠の中で、あれもこれもと考えましたが、あくまで「体験学習会」ということです。体験に重きを置くことにしました。
メインは、広報誌のほんの一部分を題材に、写真の説明を入れながらの読み原稿を作成。
「科学」という言葉に「サイエンスのほうのかがく」と説明を入れたり、「ゼッケンといっても、初めから見えない人に、わかるのか」等、なかなか鋭い質問が、飛び出したりと、5~6人のグループに分かれのワークショップは、静かに盛り上がっていました。
続いては、一人4分の持ち時間内で、録音に挑戦。
みなさん、発声練習でも、マイクに向かっても、しっかり声が出ていました。
最後には、一部分ずつですが、再生した各自の「読み」を聴いてもらいました。
当方が、準備した、小説、雑誌、マンガも試聴。
「広報誌は、パソコンで作るのだから、データから合成音声にすることは、できないのか」と。
まさにおっしゃる通り。早くそうなるべきでしょうね。
再生機についてや、録音図書の流通についての質問には、もう少し時間があれば、丁寧な対応ができたのにと、つい思ってしまいます。
さて、日立さんでは、洗濯機にDVD付きのものが、あります。メーカーさんが、何もしていないわけではありません。
しかし、一般的に家電製品の取り扱い説明書には、音訳者が苦労しているのは、事実です。集中して取説の音訳依頼のくるグループもあります。このことに関しては、交流会でのおしゃべりの中で、同感してくださった方々もいます。
本当に短時間で、視覚障害者の、生活・学習・読書等の環境についてまで、言及できませんでしたが、みなさん、一つ一つのことに、熱心に耳を傾けてくださいました。
仕事を終えて駆け付けてくださったみなさまの意識の高さに、こちらも刺激を受けましたし、勉強になりました。
まず、顔と顔を合わせて、お互いのこと、立場を知ることから、すべてが始まる。私は、いつもそう思っています。
こういう機会を与えてくださったみなさま、そして、当日参加してくださったみなさまに、改めてお礼を申し上げます。

No.253 日点詣で?

珍しく2日間ほど、日本点字図書館に、おじゃましました。
それぞれに目的はあったのですが、それとは別に、小野館長にお目にかかりました。
「藤田が行く」を見てくださっている、奇特な方のお一人です。
私たちの活動や目指しているものから、共感できる部分があれば、何かできないかと考えてくださっているふしがあります。(勝手な憶測です)今まで、ずっと視覚障害の方が館長だった中で、初の目の見える館長として指揮をとられています。
広く視覚障害者支援の活動を地道に続けてこられた方だとお見受けしました。
NPOの代表でもあれば、自在に動けるということもあるでしょうが、いかんせん「天下の日点」です。
こういう社会情勢でもありますから、難しい点がたくさんあって大変だと、勝手に想像しているところです。
さて、音訳講師の松本先生にもお会いしました。
直接お目にかかって、一言お伝えしたいことがありました。思いがけないタイミングで、一つ解決できました。
川崎市盲人図書館の飯田館長は、先日の関点協春期研修会に参加されていた方です。改めて、ご挨拶させていただきました。
また、長崎県視覚障害者協会の野口会長とも、名刺交換できました。
また、そこで行われていた集まりの参加者にもお会いできました。筑波技術大学の長岡先生と田中さんには、1日の研修会のお礼を直接申し上げることができました。
視覚障害者支援総合センターの高橋理事長と村上さん、東京大学の韓さん、大阪の三上さん、「読み書き支援」でお世話になった加藤さんとも、ご挨拶できました。
短時間で、さまざまな方に出会えて幸いでした。
しょせん、顔と顔を合わせてお互いを知ることからしか、始まりません。
特に歴史の浅い私たちのことを、多くのみなさんに知ってもらいたいと思います。私たちの音訳活動は、大切な活動ですし、私たちの原点でもあります。ここを疎かにするつもりはありません。
しかし、大きくいえば、今の日本の現状、そして視覚障害者をとりまく環境をしっかり認識した上で、今の活動を考えていかないと、下手をすると「音訳者よがり」に陥りかねないと思います。
そのために、日常の活動に追われている音訳者のみなさんに、成り代わり、あちこち出向き、情報を収集し、発信しているつもりです。
ここは、みんなでしっかり考えていきたいものです。

No.252 テキスト化プロジェクト

事の始まりは、あの3、11直後のことでした。
高知市内の藤原さんからの依頼が地元の音訳ボランティアの松田さんを通じて、私に連絡がきました。
厚労省のホームページから、毎日出される震災情報が、そのままでは、合成音声で読み上げることができない。
PDFファイルをテキストファイルに変換しないと、使えないと言う話で、その作業をやってほしいというようなことでした。
文字情報を音声(肉声)に換えるのが、私たちの仕事。音訳者が、そこまでやるの?というのが、私のなかの素朴な疑問でもありました。
しかし、藤原さんご自身も視覚障害をお持ちなのに、日頃から、全国の仲間に情報提供している方です。
ここでも、あちこちに当たり、たどり着いたのが、私たちのネットワークだったというわけです。
大震災直後ということもあり、このコーナーで私が、呼掛けたとこら、一般の方々からの反響が多くて、びっくりしたことが、思い返されます。
こんなやり方だと、簡単だとか、お手伝いしますとか、ありがたい申し出でした。
通常の私たちの音訳は、どんなに急いでも2~3ヶ月は、かかります。このことを通して利用者のみなさんにとって、最も早い情報収集の手段は、これだと気づかされました。
その後も多くの利用者やボランティアと会い、情報交換し、正式にこの分野の活動を始めようと思いました。
そして、テキスト化プロジェクトを立ち上げました。当初から精力的にこの活動に関わってくれている北九州市の大木さん、事務局の黒田さんを中心に動き始めたのです。
この大木さんは、研究熱心ですし、かなりのスキルを持った方です。黒田さんも校正のスキルはかなりのものです。
さて、会報でもお知らせし、6月1日の研修会で、チラシを配布、協力を呼掛けましたが、いつも通り、反応はなし。
声を使うことを専らにしてきた音訳者にとって、抵抗のあることかもしれません。
協力してくださる方は、会員であろうがなかろうが、音訳者であろうがなかろうが、個人、団体でもかまいません。
まずは、名簿登録をし、依頼があったら、その時に対応できる人に作業を、お願いします。
このことだけをやるというような人は少なくて、それぞれの日頃の活動があるわけですから、なるべく個々の負担を少なくしたいと考えています。
また、個々のスキルも違いますので、無理のない分業で、かまわないと思います。
年内中には、講習会も予定しております。
取り敢えず、興味のある方は、ぜひ登録を。
藤原さんも「ニーズはあるのに、対応してくれるところが少ない」と、言っています。
ここにきて、嬉しいことがありました。
多摩市音訳グループ繭の幸野さんに送った、私のSOSのメールを、幸野さんの長年の人脈で、あちこちに転送してくださったそうで、協力したいと手が挙がりはじめました。
小樽市の軽部さんからも、まずは個人でと、名乗りをあげてくれました。
本当にありがたいことです。
私は常々、みんな同じことをしなくてもいいのではと、考えてきました。それぞれが独自性を持つべきだと。
みなさまと一緒に、このテキスト化プロジェクトを根付かせ、育てていきたいと思います。
ぜひ、よろしくお願いいたします。
    6月1日の研修会で配布されたチラシ はこちら←です。

No.251 関点協春期研修会

私たちの会員の中には、僅かですが、音訳ボランティアではない方たちも含まれています。私たちの設立趣旨や活動に賛同してくださる団体・個人、来るもの拒まずで、やってきています。
そんなわけで、点字図書館、公共図書館、社会福祉協議会の職員や一般企業の方もいます。
そんななかのお一人に、神奈川県ライトセンターの姉崎さんが、いらっしゃいます。個人会員です。
いつも暖かく励ましてくださる方です。
この姉崎さんから、ありがたいお誘いがありました。関東地区点字図書館協議会の平成24年度春期研修会で、話をしてほしいと。会場は、神奈川県ライトセンターです。加盟館は17館です。
中には、日本点字図書館(情報課のみ団体会員)、霊友会法友文庫点字図書館(団体会員)、ぶとうの木ロゴス点字図書館、東京ヘレン・ケラー協会点字図書館等には、日頃から大変お世話になっております。
しかし、他の点字図書館のみなさんとの交流は、ほとんどありませんでした。
まずは、何事をなすにもお互いを知ることから始まります。
またとない貴重な場です。
ありがたくお受けしました。
現場のベテランの職員のみなさんに、何を話せばいいのでしようか。
姉崎さんは、私のことをよくご存知で、「音ボラネットの宣伝をしてください。音ボラネットのことを知ってもらいましょう」と。
「そういうことなら、お任せください。気が楽です」と申し上げました。
「全国音訳ボランティアネットワークをご存知ですか」と題して、ネットワーク誕生まで、現在の活動内容、今後の課題と展開について、話させていただきました。
今後、点字図書館とも、協力・連携しながら、利用者への情報提供ができるといいです。厚労省管轄の点字図書館と、文科省管轄の公共図書館、そして後発で弱小の私たちではありますが、利用者のためという一点で、立場を超え、繋がることができると信じています。
私の拙い話を、お聞きくださったみなさん、お世話くださったみなさんに、心からの感謝を申し上げます。またいつか、お目にかかりたいと思います。
ありがとうございました。

No.250 ロバさん訪問記

NPO法人ロバの会(代表山田新作さん)を、初訪問しました。
四条大宮からほど近く、回りには新撰組隊士が眠る壬生塚が必見の壬生寺(壬生狂言でも有名)や、新撰組が3年間過ごした屯所(宿舎?)、八木邸があります。古い木造の町屋(三軒長屋と呼ばれるような建物)が、今でも、しっかり住まいとして使われています。
こういう中のマンションの一室に、ロバの会の事務所は、あります。
1日の「学習を支える音訳」研修会から戻ったばかりの山田さんはじめ、会の代表のみなさんが、出迎えてくれました。会員は50人実働が30人、利用者は全国に3000世帯という規模です。
この会では、もっとも早い時期にカセットテープを廃止して、DAISYへの移行に取り組みました。
すごいのは、利便性ということを理解してもらうために、時間をかけ丁寧に、利用者を説得することから、始めたというところです。
当初から、理療系の音訳やタカシマヤ通販のカタログの音訳を、行ってきました。
このカタログは、タカシマヤから依頼があったわけではなく、あったらいいねという利用者目線に立ってのことです。京都市内はもちろんのこと、東京のタカシマヤまで出向き、何度も説明、打合せを行い、大変苦労したようです。
全国でも初の取り組みで、マスコミにも取り上げられ、通販部門の売り上げが、伸びました。
このタカシマヤは、高級イメージなのでしょう。価格設定は、決して低くくはありません。
ほかにも、通販カタログは出ているので、バランスよく、もう少し安い商品を扱っている所のものもと、考えたこともあったそうですが、現実は、厳しいようです。
ロバの会に続く音訳グループも現れず、残念なことです。
あちこちで、「重宝して買い物をしています」という利用者さんの声を聞きます。
またある時、山田さんと盲学校の全国大会に参加したことがあります。全盲の先生が、「山田さん来てるのか、山田さんたちのおかげで、みんな、国家試験に合格したでぇ。今日は山田さんに会えて、嬉しいなあ」と寄ってきて、手を握って離さないのです。
音訳者冥利に尽きるだろうと、羨ましくなりました。こんな具合ですから、利用者の中で、ロバの会を知らない人は、潜りかもと思うほどの存在になっています。
そして、山田さんたちが、特に働きかけてきたわけではないのに、その活動に賛同した錚錚たるメンバーからなる後援会ができたり、やなせたかしさんが、会のシンボル、ロバをデザイン化してくれて、会の歌までできたり、利用者さんからの寄付があったりとか。
本当に人に恵まれてきたと、山田さんが言っていました。利用者さんからはもちろんのこと、一般の人たちからも信頼を勝ち取るとは、こういうことをいうのでしょう。
山田さんが、よく言います。ロバの会は、今やローバ(老婆)の会だと。文芸書を読みたい人は、たくさんいますが、真に必要とされている、生活や専門情報を必死になって音訳しているロバの会を、応援してくれる人はいないでしょうか。
そういえば事務所のテーブルの上に、色とりどりの封筒が並んでいました。今や、利用者向けのCDは行きっぱなし(返却不要のため)なので、布やビニールの郵袋ではなく、紙封筒が大量に必要なのです。
音訳はしなくても、山田さんの奥さんのように、内職よろしく、切り貼りして封筒作りをする人も、大切なメンバーです。
念願のロバの会を訪問して、じっくり話ができました。
山田さんはじめみなさん、いつまでもお元気で、心待ちにしている全国の利用者さんに応えてあげてください。
私も何かお手伝いしなければ、という思いで帰ってきました。

No.249 京都行き

京都に行ってきました。
「4しょく会」春のイベント ボランティアは<目が見える視覚障害者>になれるのか?というテーマのイベントが、長岡京市で開かれました。
この「4しょく会」が、よんしょくかい、なのか、ししょくかい、なのかもわからず、参加しました。(正しくは、ししょくかいです)
「視覚障害者文化を育てる会」(4しょく会)は、2001年に関西在住の視覚障害当事者を中心に、結成された団体です。
活動方針は4つの「しょく」(食・色・触・職)の探求と発信です。
以上のようなことは、帰京後、広瀬浩二郎さんの著作から、知りました。お粗末です。
さて、今までボランティアの姿勢は「for」(一方向)から、「with」(双方向)へと移行してきましたが、この「4しょく会」では、視覚障害者からの発信(from
the blind)を重視するイベントを企画してきました。
というわけで、当日は5人の見常者から、それぞれのボランティア体験の発表がありました。
とくに興味をひかれたのは、音訳・点訳・ガイドボランティアの方々のお話でした。
音訳ボランティアの代表は、奈良の渡辺典子さんでした。
この方の名前を、プログラムで見つけ、参加してみようという思いに、弾みがつきました。
音訳の大ベテランであり、万葉集を大変な思いで、読まれた方です。
「あなたは、全国をつないでいる、私は、地域を結びつけたいと思っている」という言葉に、励まされ嬉しくなりました。
100人ほどの参加者のなかの、私の呼掛けに応えてくださった、宇治市の服部さん、高槻市の戸田さん、生駒市の成瀬さん、三木市の澤井さん等、音ボラネットの会員のみなさんと交流ができたことは、何よりでした。
また、名古屋の近藤さん、静岡の立花先生ご夫妻、東京の韓さん、千葉の藤井さん等々、懐かしい方々にも、お会いできました。
また、新たな出会いもありました。この度の再会、そして新たな出会いから、何かが生まれることを期待します。
お目にかかれたみなさま、ありがとうございました。

No.248 ロービジョンと読書環境について

今回で37回目となる、出版UD研究会に参加しました。
広島大学の氏間和仁先生が、ゲストスピーカーです。「ロービジョンと読書環境について」というテーマのもと、参加者のiPad体験も含め、お話を伺いました。
まず、「ロービジョンとは、治療や屈折矯正等を施してもなお、何らかの原因によって視機能が十分に発揮できず、読書や書字、歩行等の生活上のさまざまな活動に、永続的な困難を生じる状態」という定義づけがありました。
一言で、視覚障害と言っても、全盲でも先天盲もあれば、中途失明もあります。
ましてや、ロービジョン(弱視)にいたっては、多様な見えにくさがあるということを、改めて実感しました。
特に私は、iPadを使って画面上で白黒反転や文字等の拡大、特殊メガネでの見えにくさの体験をしたことが、一番印象に残りました。
今の視力を最大限に利用し、学習や読書等ができるツールとして、iPadに対する期待は大きいと感じました。
今回は、テーマがテーマなだけに、多くのロービジョンの方が、参加していました。
みなさんの感想として、「すでに購入済みだが、使い方がわからなかったのが、よくわかった」 「生活が楽しくなった」等、好評でした。
しかし、「文字が大きくなって、見やすくなったのはいいが、操作するのに視力が必要」という声には、複雑な思いを抱きました。
少数のユーザーのニーズに対応したモノ作りは、メーカーにとっては、大変でしょうが、大切なことです。ぜひともさまざまな声に、耳を傾けてほしいと思います。
そして、氏間先生たちが、やっていらっしゃるようなiPad体験会が、各地で開かれるようになるといいです。
パソコンボランティアのように、iPadボランティアがあったらいいですね。
今回も、仙台、静岡はじめ、韓国からの留学生等々、熱心なみなさんで会場は一杯でした。
いつも感じることですが、ここに集まってくるのは、私のような音訳ボランティアおばさんも含め、実にさまざまな立場のみなさんですが、同じ志向性を持った人たちだと思います。
つまり、学び情報交換しながら、何かできないか、何かをやりたいと思っている人たちです。
何かの時には、協力・応援をお願いしたいですし、私たちが、できることがあれば、ぜひやりたいと思います。
一回より二回、二回より三回、直接顔と顔を合わせることで、お互いへの理解が深まります。
結果、的確なアドバイスもいただけます。
ここでの出会いから始まり、今につながっている方たちが何人もいらっしゃいます。
こういう場を提供くださっている座長の成松さん、関係のみなさま、そして、参加のみなさまに、心からの感謝を申し上げます。

No.247 音訳ボランティア体験学習会

私たちが、日頃お世話になっている、東京ボランティア・市民活動センターの担当の方から、連絡をいただきました。
日立製作所のCSR部の企画で、音訳について、体験を交えた学習会を開いてほしいという依頼です。「ボランティア体験学習会」というところでしょうか。
昨年秋、東京都のボランティアフェスティバルを、経験しています。その時のノウハウで何とかなるだろうという思いと、企業の皆さんに、音訳について、ひいては、利用者の生活・学習・読書等の環境を、知っていただく願ってもない機会だと思い、二つ返事で、お引き受けすることにしました。
ボラセンの担当の方と日立の担当の方と、打合せをさせていただきました。
さすが大企業さんともなると、CSR本部、国内外の社会貢献部というのが、あるのですね。
年に2~3回のペースで、過去10年間の活動歴があるようです。
原則毎回、国内すべてのメンバーに呼び掛けるとのこと。
ただ、勤務の終わった平日の夜の開催ともなると、都内中心ということになるのでしょうか。毎回、熱心な方々が、集まってこられるそうです。
期日は7月4日の18時30分から、会場は、ボラセンの上の階のスペースをお借りできることになりました。
まずは、簡単に「音訳とは」ということをお話しさせていただきます。あとは、体験に時間をさきたいと思います。
5~6人のグループに分かれて、広報の一部分を教材に、音訳原稿を作り、代表が、実際に録音します。
続いて各グループのものも、聴いてみましょう。
そして、最後には、音訳ボランティアが読んだものを聴いてもらいます。
その他にも、小説はもちろん、マンガや雑誌等も試聴しましょう。
興味を持っていただける体験コーナーにしたいものです。
最後に、ぜひとも訴えたいことは、各種製品の取り扱い説明書は、企業の責任として、紙ベースのものはもちろん、CDをつけるべきではないかということです。
奥が深く大変な中にも、喜びも大きい音訳ボランティアを、みなさんは、どんなふうに感じてくださるでしょうか。楽しみでもあります。