No.266 シンポジウム

氷雨降る15日、なごや会(公共図書館で働く視覚障害職員の会)主催のシンポジウム「障害者にわかりやすい音訳、録音資料の基本を考える」が、開かれました。
今春から なごや会の会員になりました、とおっしゃる専修大学の野口先生のご紹介で、神保町の神田キャンパスが、会場です。
足元の悪い中、音訳者はもちろんのこと、図書館や出版関係者、合成音声のソフト開発者等々、北海道から山口まで、170名定員の会場が、狭く感じられるほどの大盛況ぶりでした。
音ボラネット事務局として、東京駅からのガイドや受付のお手伝いをさせていただきました。
この度は、本年3月に定年を迎えた、横浜市中央図書館の川上正信さんの退職記念のシンポジウムです。
川上さんには、音ボラネット立ち上げ前の全国大会の頃から、さまざまアドバイスをしていただいてきました。
横浜から、事務局の例会にも参加してくださっていました。また、私がNHKの取材を受けた時も、利用者であり、図書館職員でもある川上さんと、横浜の、とある橋のたもとで待ち合わせるという「絵」を撮られたこと、「音訳者のネットワークに期待する」とおっしゃってくださったこと、懐かしく思い起こされました。
さて以下、私の個人的感想等記してみます。
やはり、音訳は奥が深いということです。そもそも1+1=2というような世界ではないと、音訳講師の高橋先生からも、改めてご指摘がありました。
「音訳とは、こうあるべきだと教わりました。だからその通り実践しています」というのは、基本としては、間違ってはいないのですが、時代は、移り、利用者のニーズも多様化しています。
そうなると、基本は大事、しかし、そこをどう開いていくかということを、考えていかなくてはなりません。
読む物によっても大きく違います。
答のない世界だからこそ、各々の感性を研くしかないのだと思いました。そして、「よい録音図書に出会えるのは、少ない」という一言に、ふだんなかなか聞こえてこない利用者の本音として、重く受け止めました。
川上さんは、音訳の手法に疑問を感じ、10年ほど前から、NHK日本語センターの講座を受講。朗読コンテストでは、7回も優秀賞を受賞されています。このことに関しても興味深いことを言われていました。
当然ながら川上さんは、原本を点字に打ち直して、録音するわけです。「漢字に惑わされずに読める(点字はカナ表記のため)、そこが、みなさんと違うのかな」と、新鮮な驚きでした。
また、「間」について、「音訳者に恐怖心がある」結果「聴き手の理解を助けるための間、のない人がほとんど」だそうです。
「聴き手の存在を、常に意識すると聴き手に内容を伝えようとする意識が、強くなる。目指すのは、読み手の音訳ではなく、聴き手のための音訳であることを忘れないこと」そしてそれに伴い音訳者も、「聴く力をつけることが、大切で、それが音訳スキルをあげる早道」とも。
聴くことの講習を入れたり、ラジオを聴くことも、薦められていました。
忙しさのあまり、どこかに置き忘れている、音訳の基本を、再確認させていただきました。
シンポジウムに続くお祝いの会では、その他のなごや会のメンバーや、野口先生、高橋先生とも楽しくおしゃべりさせていただきました。
有意義なひとときでした。

2 thoughts on “No.266 シンポジウム”

  1. 事務局の皆様、いつもお疲れ様です。
    風邪ひかなかったかな?
    皆さん強ーいお姉さま方だから・・・・・
    音訳の「間」、いつも心がけているつもりでしたが、
    「、と。」「行間」「章の間」・・・・・・
    「理解を助ける間」という考え方は持っていませんでした。
    良いことをお伺いしました。
    今年もあとわずか、
    来年も良いお年をお迎えください。

    1. 松木さま
      那須連山の雪から、東京に吹く風は冷たいですが、松木さんからのメッセージ、いつもあたたかくて元気がでます。
      「間」ひとつとっても、初心が大事ですね。忙しさの中にあっても、ゆとりのある録音を心がけたいと思いました。
       先日の那須塩原温泉の旅では、朝起きると雪景色でしたヨ。
      明日は冬至。ゆず湯に入ってあたたまります。
      メッセージありがとうございました。

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