音ボラネット総会でご講演くださり、各地で音訳講師もされている磯野正典氏が下記の本を出版されました。
音声訳図書制作に役立つ漢字のふりがな、写真の読み方、読み方の具体的な要望も掲載してあります。「著者は音訳者にどのような読み方をして欲しいのか」という問題に一石を投じています。
詳細は次のとおりです。是非お手に取ってみませんか。
『語り継ぐ戦争体験 昭和二十年 父・海軍予備学生、母・代用教員の青春』
著者 磯野 正典 金城学院大学教授 私家版
音声訳図書制作に役立つ資料を付けた書籍が出版されます。漢字のふりがな、写真の読み方、読み方の具体的な要望も掲載してあります。当然、自由マークも付いています。そして、この本は「著者は音訳者にどのような読み方をして欲しいのか」という問題に一石を投じています。それは、著者から「こう読んで欲しい」という要望を乗せているからです。
音訳者が録音図書を製作する時に常に向き合わねばならないのが利用者です。講習会でも、聴き手を意識する様指導されます。いかに聴き易いか、正確であるか、理解し易いか等の配慮は音訳の基本です。しかし、著作物に込められた著者の思いに向き合う事は余りありません。音訳は情報提供手段の一つで、芸術的表現手段ではないと言われますが、生身の人間が文章を読めば、そこには必ず読み手の理解度や感情が読み方に反映されます。
音訳者の読み方について、著者が何か言ってくる事は殆どありませんし、「その読み方でよかったのか」を確認する事も出来ませんし「著者がどの様に読んで欲しいのか」という事はこれまで殆ど問題にされて来ませんでした。
しかし、著者は決して「どんな風に読んでもらっても構わない」とは思っていない筈です。大切な作品を台無しにされるように読みを許せないという著者もいるかもしれません。しかし、現状著者は自分の作品がどんな風に読まれているのかを殆ど知らないのです。
一方これから音声訳データーが、いつでも何処でも誰にでも提供される時代が来ると、貴殿の音訳に対して著者が何かを言って来る可能性が出て来ます。それはボランティアだから許されるのでしょうか、解決のために著者が協力してくれるのでしょうか。現在の所、この問題の答えは全く見えていません。
私のこれまでの著書は当初から著作権開放のEYE マークを付けて出版したので、多くの音声訳に供しています。その中には、「どうしてこの様な読み方をするのだろう」とか、「そんな読み方をしたら台無しではないか」「感情移入がされ過ぎる」などと感じざるを得ないものもありました。しかし、音訳に関わる者として、個別にお願いや、やり直しを要求はしていません。ただ、作者の思いとは異なる作品になっていると残念な思いに囚われました。でも、これは恐らく容易に解決しない課題だと思っています。
そこで、今回の作品では、せめて「こんな風に読んで貰いたい」という要望を資料として添付しました。利用者に向かい合うのであれば、著者にも向かい合う必要があるのでないかとい考えた次第です。そして、語彙の読み方や写真の読み方についても併記しました。考えてみたら、この様な音訳用の資料が出版時に掲載されている書籍はこれまでに無かったみたいです。(あればご教示ください。日本初を削除します)
私は本書を音訳講習会のテキストとして活用する計画です。あくまでもこの本に対する著者からの要望というものではありますが、一つのケーススタディーとして捉え、著者に向かい合ってください。著者は講座で直接受講者と向かい合います。そう言う意味では何か「画期的な講習会」になりそうで、私も大いに学びたいと考えています。本当に音訳には色々な側面と課題があるものだとつくづく感じています。
※ 本書は私家版です。出来る限り経費と手間をかけず制作しますので、簡易な装丁で、発注があってから製作します。何種類かのパターンを用意しました。何卒ご理解下さい。ご購入ご希望があれば下記へご一報ください。
折り返しご相談の上、制作してお届けします。基本価格は千円を想定していますが、装丁によって変わります。
メール isono@kinjo-u.ac.jp.
郵便 〒463-8521 名古屋市守山区大森2-1723
金城学院大学国際情報学部 磯野研究室 宛
※ 郵便の場合は返信用封筒に宛名を記入し84 円切手を貼って同封して下さい。
追伸 本年前期は全国10箇所から講習の依頼を頂きましたが、新型コロナ肺炎のため全て中止となりました。サバティカル研究休暇もメインの「東日本大震災と地域メディア研究」での出張調査がままならず、10年前から温めていた父と母の戦争体験を書いた本を図らずも仕上げる事になりました。